2011年4月10日日曜日

Stay strong

震災の復興には、阪神淡路大震災の時よりもはるかな歳月が必要になる。その現実は、こうしてはるか遠く暮らしている僕にも重くのしかかって来た。しかし、もううつむいているのはやめにする。

できることは何か。
やるべきことは何か。
そして、自分がどうあるべきか。

時には自らが選択できない現実の困難に出くわしてしまうのだ。
「絶望」、まさにそんな時ほどこの言葉がふさわしいことはない。
好むと好まざるとにかかわらず、降りかかる災厄に、
その「絶望」に、天を仰ぎ、神を恨む。

しかしその障害は、それを乗り切れる者の前にだけ現れる壁なのだ…、そう信じたい。



Hamburgの日本食レストランでは客足が遠のいているという噂を耳にした。客足が遠のくのは何も風評だけのせいではあるまいと思うけれど、まぁ一部にそういう動きがあるのかもしれない。
正直いって、僕はそういうのをまるで気にしていない。日本食が原発の問題で廃れるとはまるで思わない。使用食材の産地を気にする人も少なくないが、厳密に行って、ドイツ政府が輸入許可を経ていないものを我々が使用できるはずもないのだ。良識ある、極まともな人ならそれくらいの見当はつく。


そして今夜も店は満席でした。もともと僕の作る寿司は、盛り付けからしてアレンジをかなりしているもので、寿司というジャンルを経てはいるものの、それに囚われない前衛的(と言うと大げさか)デコレーションをこだわりとしている。その甲斐あってか、売り上げで寿司が低迷する傾向は今のところまるでない。もちろん危機管理をおざなりにはしてはいない。僕にはまだちゃんと策がある。それくらいのことも考えて仕事をしてプロと言うものだ。


もともと僕は高い輸送賃を払って直接日本からの食材を仕入れて特別な日本料理を作ろうという考えは爪の先程も考えていない。僕は日本人である。それが料理を作る上での大前提なのだ。料理人がドイツに来たのだ。まずはその土地で手に入るものを使って、日本人の視点と、日本人であるが故の食味と、積み上げた技術とで、まずは「美味いもの」を作り上げるのが使命である。


僕が作るのは、その大前提における「寿司」と言うジャンルの料理だ。
今夜来て下さった常連のお客さんは、僕のことを芸術家だと、評して下さった。食べて美味しいのは基本中の基本。それを目で慈しむことのできるレベルに昇華する、そのことを汲みとって評価頂いたと、有難く承りました。


ネタの魚介類はもっぱらユーロ圏内からです。主にマグロは地中海産(スペインもしくはギリシャ)、サーモンと鯖はノルウェィと言った感じ。しゃりに使う米はイタリア産。これだって現地で日本人スタッフがライセンスを持って生産したもの。でもね、このジャーは日本製です。象印さんの優れモノです。この炊き加減だけは譲れませんね。


ある方からネタもさることながら、とにかくしゃりが美味かった! と言っていただいたのは嬉しかった。しゃりの炊き具合だけはこれで万事オッケーなんて軽くひとくくりにはできないからね。
寿司ネタは鮮度が大きく左右する。でもしゃりだけは料理人の腕がまずは評価されるところですから。

最後にこのサイト見ていて涙が止まらんかった。とにかく踏ん張って行くしかないんや! そういう気持ちでいっぱいになった。Stay strong !
まさにいまはそれなんやと思った。
http://www.youtube.com/watch?v=SxzWNQGCogo