料理人の仕事は実に地味です。毎日同じことの繰り返しを、丹念に日々繰り返します。もちろん扱う食材やそれに伴う下ごしらえは、季節や仕入れ状況で変わることはあれど、毎日の仕事の段取りが大幅に変化するということは、まずありません。店がグランド・メニューとして基盤においているものの味やクオリティに変化やブレがあってはいけませんから、必然的にそうした基準での仕事というものが必要になります。
ただお客さんは違います。毎日同じお客さんが来るわけではありません。客商売ですから、ときに様々な変化やアクシデント、要望にお応えしなくてはならなくなるのです。そしてこれに柔軟に対応する「要領」、つまりその「能力」というものが日々問われます。その柔軟な対応は、日々の地道な鍛錬の繰り返しの中でしか養われません。ベースにあるスキルがしっかりと地に根を張っていないと、のびた枝をしっかりと支えることはできません。基礎があるから、変化に対応できる…というわけです。そして大きな成果は、その臨機応変さの中のクオリティの高さで評価されます。その場しのぎ的な成果は、お客さんの心に長く留めておくことはできません。
「いつ来ても期待通りの料理が食べられる」
「いつ来ても満足のいく内容の料理が食べられる」
これが私が考える料理人の基本姿勢です。ただ「いつ来ても…」と思っていただくためには、常に向上していなければ頂けない評価でもあります。また来て下さるというお客様の気持ちには、常に「期待感」が込められているからで、期待感は、それを上回る期待値で答えなくては満たすことができないからです。
「飲食を通じて幸福と感動を味わってもらいたい」
すべてはここにはじまり、これに尽きる、と私は感じているし、それを肝に銘じています。
この場を借りて、私は私の仕事を振り返り、またこれからを向上させていく自分のために、思いのすべてを言葉という形に置き換えて、書き記し、残してていこうと思っています。
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