私は10年間、京都市内に10店舗の支店を持つ飲食店に勤めていました。創業30年で市内に10店舗と言う出店ペースは決して早いものではありませんが、この会社社長のポリシーが「収益のための店舗展開ではなく、常に顧客満足度を満たすための店舗展開、進出」でした。つまり店のクオリティ、レベルを落とすような出店ではなく、必ずその地域でNO.1 を実現できる事を前提に置いての出店計画を貫いていました。
事実今日でも、どの店も連日満席で週末には予約を取ることもままならない盛況ぶりです。どの店の従業員も活気と笑顔に溢れ、常に来店されるお客様の心とお腹を幸せで満たしてくれる、そんな素晴らしいお店です。
私はそこで接客マナーを学び、実際にホール係としての勤務もこなしてきました。
「なぜ、お客様の来店に合わせて『いらっしゃいませ』を言うのか?」
「『サービス』とは何を示すのか?」
「最高のサービスを目指すために何ができるか」
決して難しく考えないでください。基本にあるのは、「最も大切な人を家に招くときにするべきこと」なのです。ただそれを『仕事』として如何に昇華させるかなのです。
これらの「サービス」は私が勤めた飲食店で実践されているほか、シェラトン、ヒルトンなどの一流ホテルまたはディズニーランドにて実践されているノウハウです。もし皆さんがそのノウハウを実体験し、実践していくことができたなら、接客サービスの向上のみならず、皆さんの将来の就職や、あなたの才能を活かすためのスキルの一つとして最高のパフォーマンスを発揮すると、私は信じます。
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「なぜ、お客様の来店に合わせて『いらっしゃいませ』を言うのか?」
ただ言うだけではいけません。気持ちのいい笑顔を添えて「いらっしゃいませ」と言わなくてはなりません。そこにはまず『感謝』の気持ちを込めなければならないからです。「数あるレストランの中から当店を選んで来て下さったことに対する『感謝』なのです。また別の角度から見ると、働ける喜びを表す『感謝』でもあります。私たちの給料はオーナーから貰うのではありません。飲食をして下さったお客様の代金から頂いているのです。お客様がいなければ、私達が得る給料は存在しないのです。当然、「ありがたい」という気持ちを添えるにはあなたの一番素敵な笑顔を添えるべきではありませんか?
また「いらっしゃいませ」という言葉には、働く仲間、従業員同士への伝達という意味も込められています。「いま新しいお客様がいらした」というお知らせなのです。ホール係は「接客サービス」のスタートを示し、調理スタッフには調理にかかる伝達になるのです。お客様がドアを開けた瞬間から、私達の新しい仕事が始まるのです。
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「『サービス』とは何を示すのか?」
「サービス」とは何でしょう? それは何かを無償で提供することではありません。「サービス」とは付加価値なのです。本来ある価値にプラスアルファされたもの。それはお得感であり、満足度を示すものであります。何かをおまけに付けることも確かに「お得」ではありますが、それは一時的なイベント的な効果を狙ったものでしかありません。この効果は一見効果的に見えても、決して継続的効果は望めません。では何に「お得感」見いだせばいいのでしょうか?
一番身近にあるのは、あなたの「笑顔」です。
あなたがカフェでお茶をしようとしたところ、無愛想な店員のいる店と、愛想のいい店員のいる店があればどちらを利用しますか? 同じ4Euroのコーヒーを飲むのなら、気持ち良くお茶のできるカフェを選びませんか? それはつまり4Euroにプラスアルファである「笑顔」が添えられているお店を選んだからではありませんか?
もう少し付けくわえると、「サービス」とは言われる前にやった行為のことです。お客様がナイフを落とされて、その音を聞きつけてサッと新しいものを差し出した。席に着くときに脱いだコートをさりげなくお預かりした。例を挙げればきりがありませんが、要するに常にお客様に気を配り、お客様の立場になって、「○○○して欲しいんじゃないか」という声なき声に応えることを言うのです。気の効いた行為を「サービス」、ただ言われたことをするのが「作業」。この大きな違いをサービスを担う方々は十分理解して頂きたい。当然ですが、後者の「作業」従事者が得るチップは限りなく「0」に近いでしょう。
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「最高のサービスを目指すために何ができるか」
東京ディズニーランドに残る素敵なエピソードがあります。一組の家族がディズニーランド内でカメラを無くしてしまったのです。カメラを無くしたのに気付いたのは、ホテルをチェックアウトようとしたその時でした。二日間の楽しいディズニーランドでの思い出が詰まったカメラを、どこかに無くしてしまったのです。園内の落し物センターには該当のカメラはなく、スタッフは万が一見つかった時のためにその家族の連絡先を聞いておいたそうです。その一件を担当したスタッフは、家族のカメラを無くした悲しみが、なぜかとても深く、心に焼き付いていたといいます。
スタッフAさんはもう一度探してみるつもりで、家族が回ったアトラクションを全てひかえていました。しかしどれだけ手分けして探しても、やはりカメラは出てきませんでした。そこであることにひらめいたのです。スタッフAさんは、家族が回ったアトラクションの順番に、それぞれのキャラクターに出演してもらい、一枚一枚写真を撮ってまわり、それをアルバムにして家族のもとに送ってあげたそうです。
しばらくしてその両親からは深い感謝の手紙が送られてきたそうです。その時一緒に訪れた娘さんは、実は白血病でこの世を他界された、ということでした。ただ、スタッフAさんのアルバムは、息を引き取る前に彼女の下に届き、息を引き取るまでずっと枕元に置かれていたそうです。娘さんにとっては最後の楽しい思い出の、記念すべきアルバムとなったのです。
このエピソードから「サービス」は「感動」を生む、ということがお分かり頂けると思います。きっかけはスタッフAさんですが、それに賛同し、閉園後園内を探して回ってくれた同じスタッフの方たちと、アルバム作りに協力した多くの方たちの暖かい気持ちがあるのです。
一人でできるサービスには限りがあります。
チームワークで同じ目標に向かって尽くす「サービス」に限界はありません。
最高のサービスとは、「サービス」をチームで担うことではないでしょうか?
とても忙しい時にあなた一人ができるサービスには限界があります。同じホール係が連携を取り、意識を共有し、助け合うことで、より多くの成果を得ることができるのではないでしょうか。私達は意思の疎通も言語の違いで存分にやり取りができないこともしばしばですが、目標は一つです。お客様に飲食を通じて喜びを味わっていただくことです。
同じ仕事をするのなら、有意義な目標を持って働きたいと思いませんか
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