2011年3月8日火曜日

die Einladung "WEINSTEIN"

晴天に恵まれた今日、約一カ月ぶりに完全フリーの休日がやって来た。TV撮影やら日本酒試飲会など、実際の営業とは違う仕事がらみの日が続いていただけに、まるっきり店を離れての一日はほんとに久しぶり。
実は先月26日が結婚記念日だったのをすっかり忘れていた。ここはちょっと奮発して美味しいものでも食べに行こうと決意。
ここKielにもグルメな高級レストランは3件ある。その内の一軒、フランス料理で有名な星付きのレストラン "WEINSTEIN"。オーナーでありコックも務めるSylvain Awolin氏は二回ほど僕の料理を食べに来てくれて、すっかり気に入って下さっていた。前回「次の休みの日にはぜひうちに食べに来なさい」と熱心に誘ってくれてもいたので、ちょっと高いけれど(かなり高いけれど…)、清水の舞台から飛び降りるつもりで行ってきたわけです。


お店は奥さんがホールをまかない、旦那さんが料理を担当。そんな家族経営のアットホームな感じのレストラン。常に200種類のワインのストックがあり、それに見合うコーディネートされたフランス料理を出されている。月替わりのコース料理は49Euroのみ。もちろんアラカルトもある。魚介類を使った料理が割に多かったかな。ドイツに来てから必要なまでの肉料理のオンパレードに辟易していたからこれは楽しみだ。

席についてすぐにChefが挨拶に来てくれた。「今日は来てくれてありがとう。お楽しみ料理を用意したから、是非楽しんでいって」とメニューをみることもなく食事がはじまった。

まずは先付けにムール貝のサラダ。あっさりとマリネした小さなサラダ。このシンプルな味付けに僕はまず感心した。余計な味付けが邪魔したり、塩加減を間違えてたりと言うのが多いだけに、この後お料理にもかなりの期待が持てるスタートです。

二品目、3種の前菜。左から"サーモンとパパイヤのタルタル” サーモンとパパイヤが合うことの驚きと、その組み合わせに嫌みなく絡み合うイタリアンパセリの風味が絶妙。中央は"鱈とカニの擦り流し”上に乗るのはレモングラスに刺してグリルしたエビ。スープはカニの風味が良く効いておりコクもあり、しっかりと味付けをしていながらもくどすぎないうまさ。鱈の身も入っており、淡白なこの身が強いスープの風味をうまく舌の上でまとめあげてくれる。エビはエビの肉汁とバター、香辛料で風味付けしており、少しタイ風の仕上がり。右は仔牛のスライスにマグロのソース添え。仔牛にマグロが合うことにこれまた驚いた。うまく味がからんでる。

メイン料理の”ラムのもも肉のグリル” ドイツでは豚肉の足肉を使った料理”ヘクセ”が有名だが、ラム肉で食べるの初めて。ソースはデミグラスソース。ドイツ料理と違うのはこのスープが実に澄んでいること。重そうだがくどくない。雑味がない…と言った方が良いかな。妻と娘には少し量が多かったけれど、僕と息子はぺろりと平らげた。
でもまぁ、大した量だ。しかし見た目、盛り付けも丁寧だし、味付けも絶妙。これだけきちんとしたフランス料理を食べたのは、京都にいる時に(かれこれ15年くらい前の)結婚記念日に食べに行ったERGO BIBAMUS以来ではないか。

そして最後にデザート。カラメルのアイスクリームに苺のムース。ムースの上には苺とバジルのシャーベットがトッピング。苺とバジル…これが合うんです! カラメルのアイスはどこか鼈甲飴の風味を彷彿させてくれます。

コース料理は最後の最後まで細やかな心づくしが感じられ、家族共々に大満足。深い感銘すら覚えました。

料理を終えてChefが再び挨拶に来て下さった。
「料理の内容に大変満足しています。またあなたの仕事から多くのことを学びました」と奥さんに通訳してもらった。
「私はあなたの仕事を見てとても感心させられたんですよ。このKielであなたのようにプロフェッショナルに仕事をされる方は本当に稀なんです。そのことに私も感銘を受け、あなたに感謝している。今夜のディナーは私からのささやかな感謝の気持ちです」
そういって代金は取らなかった。僕なんかよりもずっと懐の広い、深い人だなぁ…と僕も感動した。こういう方と出会えるのも、今までの積み重ねか。
これからの自分の仕事も、さらに襟を正して精進していかなくては。そんな事を強く感じました。

0 件のコメント:

コメントを投稿